下水道の国際技術協力 歴史と成果

下水道の国際技術協力

クリーンな水環境を次世代につなぐ

 下水道は、家や工場で排出される汚水をきれいにするだけでなく、降った雨を川や海に流したりする役割を果たしており、都市部の水環境を守っていくためになくてはならないインフラです。北九州市では、1960年代から計画的に下水道整備を進め、現在では99.8%と日本有数の人口普及率を誇っており、住みよいまちづくりに貢献しています。

1970年代と現在の紫川の比較

 カンボジア・ベトナムでの国際技術協力を中心として、東南アジアを中心に国際技術協力を展開しています。東南アジアでは、下水道インフラの本格的な導入は端緒を切ったところであり、インフラの運転指導だけではなく、一般市民を対象とした環境啓発活動も行っています。

 クリーンな水環境を保全することにより、衛生水準の向上・防災・健全な都市発展に貢献します。

カンボジア

カンボジア

 カンボジアの首都プノンペンは、人口200万人を超える大都市です。今後も人口増加が見込まれるにもかかわらず、下水処理場はまだありません。そのため、汚水や雨水は、街なかに張り巡らされた水路を流れ、川や湖などに流れ込みます。
 現在、プノンペン都初の公共下水処理場の建設するプロジェクトが進行中であり、下水道インフラ運用のために必要な法律・制度の整備のための協力を行っています。
 また、水環境の維持のためには、市民の理解と協力が必要です。現地の小学生を対象とした啓発活動なども進めています。

カンボジア所在地

現在進行中のプロジェクト

JICA技術協力プロジェクト
「プノンペン都庁及び公共事業・運輸省下水道管理能力強化プロジェクト」
時期:2019年4月~2023年3月(予定)

プロジェクト概要

 カンボジア・プノンペン都は、急速な人口増加と都市化により汚水量が増大していますが、下水処理施設が未整備のため水路や湖の水質悪化が著しいという問題を抱えています。そこで、プノンペン都庁及び公共事業・運輸省と協力して、本格的な下水道事業の立ち上げに向けた、法制度策定や組織体制構築の支援、下水道事業を計画する職員の能力強化により、下水道整備の促進を図ります。

プロジェクトでの主な取組

長期専門家の派遣
2019年~ 1名

プノンペン都庁での協議
プノンペン都庁での協議

TOPICS
現地で活躍する長期専門家の声

カンボジア派遣

 

 下水道事業を適切に推進していくには、下水道に関する国の法律やプノンペンの条例の整備を含めて、国と地方自治体の役割分担と組織体制の整備をしっかり行うことが大切です。また、下水処理場を維持していくための運営資金として、下水道の料金を徴収する仕組みも重要です。
 長期専門家として、北九州市のノウハウをカンボジアで活かしながら、現地での法律や条例などの整備のお手伝いや下水道の重要性の啓発活動などを行っています。
 カンボジアの都市環境を改善することによって、世界のSDGs達成につなげていきたいと思います。
(2019年4月~2021年3月 カンボジア派遣 上下水道局 海外事業課 海外事業担当係長 平野 哲)

下水処理場予定地で現地大学生に下水道の説明をする専門家
下水処理場予定地で現地大学生に下水道の説明をする専門家

これまでの主要技術協力プロジェクト

JICA草の根技術協力
「プノンペン都における下水・排水施設管理能力の向上プロジェクト」
時期:2017年2月~2020年1月

プロジェクト概要

 プノンペン都の下水道の持続的発展と浸水被害の軽減に向け、下水・排水施設の適切かつ効率的な維持管理を目指すことを目的に、受入研修や専門家派遣などの支援に取り組みました。
 また、都市のきれいな水環境を守り、また、大雨による浸水を防ぐためには、街なかの水路をきれいに保つことが重要ですが、残念ながら、市民の環境に対する意識はまだ低く、街を流れる水路や路上へのごみの投棄が後を絶ちません。そこで、市民意識の向上のための啓発活動にも力を入れました。

成果

 ポンプ場維持管理ガイドラインの作成や環境教育の実践を行いました。特に、環境教育では、地元小学校の協力を得て、小学5年生を対象として紙芝居を利用した授業や水路の清掃活動など、市民への啓発活動に取り組みました。

ポンプ場の管理指導
ポンプ場の管理指導
小学校の周囲の水路の清掃活動を行う小学生
小学校の周囲の水路の清掃活動を行う小学生

プロジェクト開始時の様子(2017年8月)
プロジェクト開始時の様子(2017年8月)
プロジェクト終了時の様子(2019年12月)
紙芝居やアニメを活用した環境教育
紙芝居やアニメを活用した環境教育

紙芝居やアニメーションは、北九州市内の企業の協力により、作成されました。
北九州海外水ビジネス推進協議会会員企業・COLTさんのホームページ

ベトナム

ベトナム国旗

 ハイフォン市は、世界遺産ハロン湾と近接する港湾都市ですが、急速な都市化に伴い、家庭や工場からの排水量が急増する一方、下水処理場が整備されていないため、下水がそのまま、海や河川に放流されており、水環境の悪化が深刻です。
 水環境の改善には、下水道施設の普及と適切な維持管理が不可欠です。そこで、北九州市は2011年から下水道担当部門職員への技術支援(人材育成)を行っています。
 北九州市の技術協力により、下水管やポンプ場などの下水道施設の維持管理に関するマニュアルが整備され、ハイフォン市での下水道施設の運用能力は格段に向上しました。今後、ハイフォン市初となる下水処理場の運転に対して技術協力を行い、ハイフォン市の水環境改善に貢献します。

ベトナム位置図
世界遺産ハロン湾 近年、水質汚染が課題となる
世界遺産ハロン湾
近年、水質汚染が課題となる
汚染されたハイフォン市の河川
汚染されたハイフォン市の河川

現在進行中のプロジェクト

JICA草の根技術協力事業
ハイフォン市下水処理場運転管理・浸水対応能力向上プロジェクト
時期:2018年1月~2023年3月

プロジェクト概要

 ハイフォン市では2011年から市内初の下水処理場(ビンニエン下水処理場)の整備が進められており、2021年中に稼働予定です。そこで、ハイフォン市との下水道技術交流の集大成として、河川の水質向上の中核となる「下水処理場」の運転管理能力向上支援を行います。また、市民と行政が連携して実施する浸水対策訓練実施の支援を行います。
 この下水処理場が本格稼働すれば、ハイフォン市の水環境は大きく改善されます。ビンニエン下水処理場は、標準活性汚泥法という、本市の下水処理場と同じ水処理方式を採用しており、今後も継続的な技術協力を行う予定です。

整備が進むビンニエン下水処理場
整備が進むビンニエン下水処理場
ハイフォンでの現地指導
ハイフォンでの現地指導

これまでの主要技術協力プロジェクト

JICA草の根技術協力事業
「ベトナム国ハイフォン市下水道維持管理能力向上プロジェクト」
時期:2014年7月~2016年12月

プロジェクト概要

 ハイフォン市では、下水管にごみや土砂がたまったり、破損している状態が多発しており、下水道維持の支障となっていました。そこで、下水処理場の効率的な運営を見越して、下水管の維持管理に関する技術協力を行いました。

成果

 ハイフォン市の実情に合った「下水道管路の運営維持管理マニュアル」が作成されました。また、北九州市内の企業が製造したテレビカメラ調査ロボットを使った管内部の点検を実演指導しました。
 さらに、市民に向けての水環境や下水道への理解を促進する啓発活動を行いました。

市民向けの啓発活動(クイズ大会)
市民向けの啓発活動(クイズ大会)
テレビカメラ調査ロボットを活用した管内部の点検実演
テレビカメラ調査ロボットを活用した管内部の点検実演

JICA草の根技術協力事業
「下水道事業推進のための人材育成支援事業」
時期:2012年4月~2014年1月

プロジェクト概要

 下水道インフラを担う人材の能力向上のための技術協力を行いました。特に、ポンプ場の維持管理の効率化を目指した取組み、浸水被害軽減に向けた取組みを重点的に支援しました。

成果

 「ポンプ場維持管理ガイドライン」が整備され、ポンプ場での故障の早期発見など、下水道の効率的な運転が達成されることとなりました。また、浸水時の防災情報マップ作成及び市民への広報ノウハウの習得につながりました。

モデルとなるポンプ場を選定し、ガイドラインを試行した。
モデルとなるポンプ場を選定し、ガイドラインを試行した。
市街地の浸水状況
市街地の浸水状況

インドネシア

インドネシア国旗

 インドネシアの首都ジャカルタ特別州では経済成長に伴う急速な都市化の結果、1000万人を超える人口を要するものの、都市基盤インフラの整備が遅れており、下水道普及率は4%にすぎません。現在、本格的な下水道整備のためのプロジェクトが進行中ですが、ジャカルタ州は下水道事業運営の経験・ノウハウに乏しく、事業実施における行政組織の体制整備、能力強化が必要です。そのため、北九州市は、下水道整備促進のため、職員を長期派遣するなどの国際技術協力を行いました。現在、下水処理場や管路の整備などの事業が進んでおり、水ビジネスへもつながっています。

インドネシアの街並み

これまでの主要技術協力プロジェクト

JICA草の根技術協力
「ジャカルタ特別州下水道整備にかかる計画策定能力向上プロジェクト」
時期:2015年6月~2018年3月

プロジェクト概要

 ジャカルタ特別州において、下水道事業の実施体制強化および計画立案能力の向上により、下水道整備事業を促進するため、ジャカルタ特別州水資源局(DSDA)へ職員の長期派遣を行いました。

成果

 下水道整備の中長期計画の策定支援や下水道事業に関する条例・基準等の策定支援などを行い、日本のインフラ技術を活用した水環境の改善を進めました。

ジャカルタ市内河川の汚濁状況
ジャカルタ市内河川の汚濁状況
専門家とカウンターパートの会議
専門家とカウンターパートの会議

中国(大連市)

中国国旗

 大連市とは、1979年の友好都市提携を結んで以来、これまで経済、環境、文化、青少年など様々な分野で交流を続け、最近では、相互に支援物資を寄贈するなど、良好な関係を築いています。

 大連市の下水道普及率は9割を超えていますが、万全なインフラサービスを市民へ継続的に提供するためには、日常的な施設の点検やメンテナンスを欠かすことができず、担当職員の技術向上を図る必要があります。そのため、下水道分野でも、定期的に情報交換を行うなどの交流を続けています。

 2020年11月には、新型コロナウイルスの影響を受け、実務者レベルのオンライン交流会を開催しました。これを契機にますます双方が都市インフラ事業の未来を考え、お互いに協力する契機になればと思います。

北九州市から下水処理技術を発信
(2020年11月)
北九州市から下水処理技術を発信
(2020年11月)
中国版情報SNS「WeChat(微信)」より
中国版情報SNS「WeChat(微信)」より